テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を整形外科専門医がわかりやすく解説します
- 肘の外側を押すと痛い
- 物をつかんで持ち上げると痛む
- ペットボトルのふたを開けると肘が痛い
- タオルを絞ると痛い
- フライパンやカバンを持つと痛い
- 安静時は楽だが、使うと痛い
このような肘の外側の痛みは、
**テニス肘(上腕骨外側上顆炎)**が原因かもしれません。
テニス肘は、スポーツをしている方以外にも、
家事・仕事・デスクワークなど日常生活が原因で起こることが非常に多い疾患です。
このページでは、
「なぜ痛むのか」「どう治すのか」「やってはいけないことは何か」を解説していきます。

テニス肘とは
肘の外側にある骨(上腕骨外側上顆)に付着する腱の障害です。
手首や指を伸ばす筋肉(短橈側手根伸筋など)は、肘の外側の骨に付着しています。
これらの筋肉を繰り返し使うことで、腱の障害がおき発症します。
名前に外側上顆炎とあるように炎症による病態が初期では中心ですが、長引く方は腱の変性による腱障害がメインになってきます。
また上腕骨外側上顆炎は症候群であり、短橈側手根伸筋腱の腱障害以外の原因のこともあります。その鑑別には専門知識を要した整形外科専門医の外来を受診し、評価してもらう必要があります。
問診・診察
- 痛む場所
- 痛みが出る動作
- 仕事や生活習慣
を詳しくお聞きします。
徒手検査
- 肘外側の圧痛など痛みの出る場所の確認をします
- 手首を反らした時の痛み(Thomsenテスト など)
- 肘関節のストレステストなど
超音波(エコー)検査など
- 画像検査を追加し評価します。
テニス肘の治療法
① サポーター(装具療法)
前腕に装着するテニス肘バンドは、腱にかかる負担を分散させます。
また症状によってほかの装具が適応になることもあります。
② 注射治療
痛みが強く、日常生活に支障がある場合にはステロイド局所注射を検討します。
※症状や経過を見ながら慎重に判断します。
近年、プロロセラピーというブドウ糖液の注射により外側上顆炎の治療が注目されており、当院でも導入しております。プロロセラピーでは組織の修復を促すことにより疼痛を改善させることが分かっており、プロロセラピーによる治療が推奨されることもあります。
③ リハビリ・運動療法
- 前腕筋のストレッチ
- 筋力トレーニング
- 正しい使い方の指導
症状の程度により使い分けます。
④ 手術治療
治療期間が長く、難治性の症状の際には手術が望ましい場合があります。
患者さんの症状によっては専門病院への紹介を提案させていただきます。
⑤ 自費診療
保存療法(安静、装具、リハビリ、薬物療法など)を行っても痛みが長期間改善しないテニス肘に対して、
PRP療法(多血小板血漿療法)を選択できる場合があります。
PRP療法は、ご自身の血液から血小板を多く含む成分を抽出し、痛みの原因部位に注入する治療法です。
血小板に含まれる成長因子が、腱の修復を促す可能性があると考えられています。
一方で、すべての方に有効とは限らず、効果には個人差があります。
また、保険適用外(自費診療)となります、詳細は自費診療のページを参照ください。
当院では、症状や経過を丁寧に評価したうえで、
通常の保険診療を基本とし、必要に応じて自費診療の選択肢をご案内しています。
テニス肘に関するよくある質問
- 自然に治りますか?
-
自然に軽快することもありますが、自己流のストレッチなどで悪化するケースもあります。症状にお困りの際にはお近くの整形外科クリニックにご相談ください。
- ステロイド注射して一度はよくなりましたが、また痛くなりました。
-
ステロイド注射は症状の強い時期の痛みをいったん改善させるには有効ですが、トータルの治療期間はむしろ長くするとも指摘されています。改善しない場合にはほかの治療法を検討する必要があります。

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