五十肩・凍結肩(肩関節周囲炎)と非観血的授動術 (サイレントマニュピレーション)

「肩が上がらない」「後ろに手が回らない」「夜痛くて眠れない」――そんな症状が長引く方へ。
サイレントマニュピレーションは、痛みを抑えた短時間の処置で、硬くなった肩の動きを改善していく治療です。

1. 五十肩・凍結肩とは

肩の関節や関節包に炎症が起こり、その後関節包が縮んで固くなる(拘縮)ことで、 痛みと可動域制限(動かしにくさ)が出る病気です。典型的には次のように進行します。

時期特徴
急性期強い痛み・夜間痛が目立つ
拘縮期痛みはやや軽くなるが、動きが固い
回復期少しずつ動きが戻る(半年~1年かかることも)

※自然に回復する場合もありますが、可動域制限が長く残ることがあります。

2. サイレントマニュピレーションとは

超音波などを用いた局所麻酔・神経ブロックで痛みを抑えた状態をつくり、 医師が肩関節を丁寧に動かして固まった関節包の癒着を剥がし、可動域を回復させる治療です。 切開は行わず(非観血)、外来で短時間に実施できます。

ポイント
・「静かに(サイレントに)」=無理な力をかけず、痛みを最小限に配慮して行います。
・治療の成否はその後のリハビリで大きく変わります。

3. 適応になる方

対象
  • 数か月のリハビリ・注射・内服でも動きの制限が残る五十肩・凍結肩
  • 日常生活(着替え・洗髪・高い棚の物取り)が支障している
  • 手術は希望せず、短期間での可動域改善を目指したい
  • 医師の評価で腱板の大きな断裂などがないと判断された
適応は診察と画像評価(エコー・必要に応じてMRI)で総合的に判断します。

4. 適応外(慎重適応を含む)

注意
  • 明らかな腱板断裂、感染性関節炎、コントロール不良の炎症性疾患 など
  • 骨粗鬆症が高度で骨折リスクが高い方
  • 重度の呼吸器疾患(例:重度COPD、進行した気管支喘息 等)
  • 局所麻酔薬・神経ブロックへの重篤なアレルギー歴がある方
上記に当てはまる場合は、別の治療法や前処置を優先することがあります。

5. 当日の流れ

診察・説明・評価

可動域・痛みの場所を確認し、必要に応じてエコーやMRIで原因を評価。治療の目的とリスクを丁寧にご説明します。

局所麻酔・神経ブロック

超音波ガイドで安全に麻酔。痛みをしっかり抑え、筋緊張を減らします。

授動(マニュピレーション)

無理のない範囲で肩関節を計画的に動かし、固まった関節包の癒着を解放していきます。

安静・確認

施術後は痛み・血圧・神経学的所見などを確認。必要に応じて冷却や鎮痛薬を使用します。

注意事項のご案内・ご帰宅

当日の運転は控えてください。麻酔の影響が残る間は無理をしないようお願いしています。

所要は目安で 60–90 分程度(施設や混雑状況により前後します)。

6. 施術後のリハビリ・通院

再癒着を防ぐため、当日~翌日からの運動療法が最重要です。スタッフが安全な範囲で進め方をお伝えします。

  • 通院頻度:開始 2–4 週は週 2–3 回、その後は経過に応じて間隔調整
  • 内容:可動域エクササイズ(前方挙上・外転・外旋・内旋)、関節モビリゼーション、肩甲帯(肩甲骨)の再教育、段階的な筋力トレーニング
  • 期間の目安:2–3 か月で日常生活の多くが改善(個人差あり)
ホームエクササイズ例(目安)
・タオルを使った前方挙上・後ろ手タオルストレッチ(痛みのない範囲)
・ペットボトル等による軽負荷トレーニング(医師・療法士の指示に従ってください)
・入浴後など体が温まったタイミングで実施すると動かしやすくなります

7. よくある質問

Q. 施術は痛いですか?

麻酔や神経ブロックで痛みを抑えて行います。終了後、筋肉痛のような張りを感じることがありますが、多くは数日で軽快します。

Q. 再発しますか?

術後の運動療法と日常の使い方(姿勢・肩甲帯の動かし方)で再発リスクは低減できます。

Q. 費用や保険は?

保険適用の範囲で実施します。詳細は受付でご案内いたします。

受診・ご相談はお気軽に:症状・既往歴(骨粗鬆症や呼吸器疾患など)をお持ちの方は、予約時にお伝えください。最適な方法をご提案します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日本整形外科学会認定整形外科専門医・スポーツ医・リハビリ医
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
日本骨粗鬆症学会認定医
日本リウマチ財団登録医

コメント

コメントする

目次