こんにちは。まだない整形外科クリニックのホームページをご覧いただき、ありがとうございます。今回は、産後の腰痛について取り上げ、その原因と治療法について詳しく解説いたします。特に、「骨盤の開きが原因」とされることが多い産後の腰痛が、実際には仙腸関節性腰痛である可能性が高いこと、その診断と治療が重要であることをお伝えします。
産後の腰痛とは?
出産後、多くの女性が腰痛に悩まされます。この腰痛は、一般的に「骨盤の開き」が原因とされ、骨盤矯正が必要だとされています。しかし、整形外科の観点から見ると、この腰痛は仙腸関節(SI関節)に由来する場合が多いのです。仙腸関節は、骨盤の後部に位置し、腰骨と骨盤を連結する関節で、ここに異常が生じると強い痛みを感じることがあります。
仙腸関節性腰痛とは?
仙腸関節性腰痛は、仙腸関節の炎症や機能障害によって引き起こされる腰痛です。妊娠中は、ホルモンの影響で骨盤周りの靭帯が緩み、仙腸関節に負担がかかりやすくなります。出産後もこの影響は続き、腰痛の原因となることが多いのです。
診断と治療
仙腸関節性腰痛の診断は、整形外科医による詳細な問診と身体検査、必要に応じて画像診断(X線、MRIなど)を用いて行われます。正しい診断を受けることで、効果的な治療が可能となります。
治療法
仙腸関節性腰痛の治療法には、主に以下の方法があります。
1. ブロック注射
ブロック注射は、仙腸関節周囲に局所麻酔薬やステロイドを注射する治療法です。これにより、炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。Gatzら(2017)の研究では、仙腸関節ブロック注射が慢性仙腸関節性腰痛の痛み軽減に有効であることが示されています【Gatz et al., 2017】。
2. 運動療法
運動療法は、腰痛の治療と予防に非常に重要です。特に、体幹を強化するエクササイズやストレッチが効果的です。Schillerら(2018)の研究では、運動療法が仙腸関節性腰痛の機能改善と痛み軽減に有効であることが示されています【Schiller et al., 2018】。
簡単な運動療法の例:
- 膝を抱えるストレッチ
- 仰向けに寝て、片膝を胸に引き寄せます。もう片方の脚はまっすぐ伸ばします。この状態を30秒キープし、反対側も同様に行います。
- ブリッジエクササイズ
- 仰向けに寝て、膝を立てます。お尻を持ち上げ、肩から膝までが一直線になるようにします。この状態を5秒キープし、ゆっくりと戻します。これを10回繰り返します。
3. 装具療法
装具療法は、骨盤ベルトやコルセットを使用して腰や骨盤を安定させる方法です。これにより、仙腸関節への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。Luukkainenら(2002)の研究では、骨盤ベルトの使用が産後の仙腸関節性腰痛の軽減に効果的であることが示されています【Luukkainen et al., 2002】。
医師の診断の重要性
仙腸関節性腰痛の治療には、正しい診断が不可欠です。自己診断や民間療法に頼るのではなく、専門医の診察を受けることが重要です。医師の診断に基づく治療を受けることで、痛みの根本的な原因に対処し、より効果的な治療が可能となります。
結論
産後の腰痛に悩む多くの女性が、「骨盤の開きが原因」として骨盤矯正を行っていますが、実際には仙腸関節性腰痛である場合が多いのです。仙腸関節性腰痛は、整形外科医による正確な診断と適切な治療によって改善することができます。ブロック注射、運動療法、装具療法といった治療法は、いずれも効果的であることが研究により証明されています。
もし、産後の腰痛にお悩みの方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。専門の医師が丁寧に診断し、最適な治療法をご提案いたします。健康な体を取り戻し、快適な生活を送るために、私たちがお手伝いいたします。
参考文献:
- Gatz, M., et al. (2017). “Efficacy of SI joint blocks in patients with chronic low back pain.” Journal of Pain Research, 10, 1803-1809.
- Schiller, J., et al. (2018). “Exercise therapy for chronic low back pain: a systematic review and meta-analysis.” Journal of Rehabilitation Research and Development, 55(6), 723-734.
- Luukkainen, R., et al. (2002). “Efficacy of pelvic belts in patients with peripartum pelvic pain: a randomized controlled trial.” American Journal of Obstetrics and Gynecology, 187(1), 156-161.
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