・歩いているとだんだん足がしびれてくる、力が入らなくなる。
・少し休むとまた歩けるけど、長くは続かない。
・腰を反らすとつらいのに、前かがみになると楽になる。
・歩くのはつらいのに、自転車なら意外と平気。
このような症状がある場合、原因のひとつとして腰部脊柱管狭窄症が考えられます。
「年齢のせい」「運動不足のせい」と思って受診を先延ばしにされる方も多いですが、症状の出方を丁寧に確認すると、腰の神経が関係していることがあります。
当院では、足のしびれや歩行障害の原因を診察で見極め、レントゲン・MRI(当初は外注)などの画像検査、薬物療法、リハビリテーション、ブロック注射などを組み合わせて治療方針を考えます。
腰部脊柱管狭窄症とは?

背骨の中には、神経が通る脊柱管というトンネルがあります。腰の部分でこのトンネルが狭くなり、神経が圧迫される状態を腰部脊柱管狭窄症といいます。
主な原因は、加齢に伴う腰椎の変化です。
- 椎間板の膨隆
- 黄色靱帯の肥厚
- 背骨の関節の変形
- 腰椎すべり症
腰部脊柱管狭窄症は、「骨が狭い」だけで症状が決まるわけではありません。画像上は狭く見えても症状が軽い方もいますし、逆に画像だけでは分かりにくい神経症状が強く出る方もいます。そのため、診断ではMRI画像だけでなく、症状の出方・歩ける距離・しびれの場所・筋力低下の有無を合わせて判断することが大切です。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021では、診断・保存治療・手術治療・術後予後までが整理されており、病歴や診察、画像検査を組み合わせて評価することが重要とされています。
腰部脊柱管狭窄症でよくみられる症状
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。

- 運動習慣がある子ほど、体力が高いという明快な結果。
- 一方で、「よく動く子」と「ほとんど動かない子」の差が拡大(二極化)している。
- コロナ禍以降、スクリーンタイム(スマホ・ゲーム)が増え、外で遊ぶ時間が減少傾向にある。
このような症状はありませんか?
- 少し歩くと、太もも・ふくらはぎ・足先がしびれる
- 足が重だるくなり、途中で立ち止まりたくなる
- 前かがみになると足のしびれが楽になる
- 買い物カートを押して歩くと楽
- 自転車は乗れるのに、歩くとつらい
- 腰を反らすと足の症状が強くなる
- 仰向けで足を伸ばして寝ると、腰や足がつらい
- スリッパが脱げやすい
- つまずきやすくなった
- 長く立っていると足がしびれてくる
上記に3つ以上当てはまる方は、一度整形外科での受診をご検討ください。

特に重要な3つの組み合わせ
| 歩くと悪化する | 休むと改善する | 前かがみで楽になる |
この3つが重なる場合、腰部脊柱管狭窄症を疑う重要な手がかりです。
坐骨神経痛や椎間板ヘルニアとは何が違う?
患者さんからよく聞かれる質問です。坐骨神経痛は病名というよりも、腰からお尻・太もも・ふくらはぎ・足先にかけて出る神経痛の総称で、その原因として腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアがあります。
| 腰部脊柱管狭窄症 | 腰椎椎間板ヘルニア |
|---|---|
| ・中高年・高齢者 ・前かがみ・座位で楽になる ・立つ・歩く・腰反らすと悪化 ・前かがみで休むと改善 ・自転車に乗れること多い | ・比較的若い世代にも多い ・立位・歩行のほうが楽なことも ・前かがみ・座位・せきで悪化 ・持続的な神経痛が多い ・自転車座ると痛いことも |

実際にはどちらか片方とは限りません。
ヘルニアと狭窄症が混在している方もいます。症状だけで決めつけず、診察と画像検査を合わせて確認することが大切です。
当院での検査・診断
腰部脊柱管狭窄症の診療では、まず「どの神経が、どの程度困っているのか」を確認します。
STEP1 問診
歩ける距離・立っていられる時間・前かがみで楽になるか・自転車や買い物カートで楽になるか・排尿排便の異常がないか・足の筋力低下がないかを詳しく確認します。
STEP2 神経学的診察
下半身の感覚・筋力・腱反射を確認します。足首を上に持ち上げる力・つま先立ちの力・足の親指を反らす力などを調べ、どの神経が障害されているかを推定します。
STEP3 レントゲン検査
骨の変形・腰椎すべり症・側弯・腰椎全体のバランスを確認します。前かがみ・反らした姿勢で撮影し、腰椎が不安定に動いていないかを評価することもあります。
STEP4 MRI検査(開院当初は外注になります)
神経の圧迫の程度・椎間板の状態・靭帯の厚み・脊柱管の狭さを確認するために重要な検査です。足のしびれや歩行障害がある場合は、MRIでの確認が必要になることがあります。
腰部脊柱管狭窄症の治療

腰部脊柱管狭窄症と診断されたからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。足の麻痺が進んでいる場合や排尿・排便障害がある場合は早急な対応が必要ですが、多くの方では、まず保存療法から始めます。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021でも、薬物治療・運動療法・ブロック療法などが保存治療の項目として整理されています
※麻痺が進む・排尿障害がある・保存療法でも日常生活が困難な場合は→手術検討できる連携医療機関へ紹介。
薬物療法
痛みやしびれの性質に合わせて薬を選びます。
- 神経の血流改善薬
- 神経障害性疼痛の薬
- 消炎鎮痛薬
- 筋弛緩薬
薬の役割について
薬だけで狭くなった脊柱管が広がるわけではありません。薬は、しびれや痛みを和らげ、歩行やリハビリに取り組みやすくするための治療です。高血圧・腎機能低下・胃潰瘍の既往・抗凝固薬内服がある方では使える薬に注意が必要です
リハビリテーション
腰部脊柱管狭窄症では、腰を反らす姿勢で症状が強くなり、少し腰を丸めると楽になる方が多くみられます。そのため、単に「腰を鍛える」のではなく、症状が出にくい姿勢や歩き方を身につけることが大切です。
STEP1 柔軟性の改善
股関節まわりの柔軟性を高め、骨盤の動きをなめらかにします。
STEP2 体幹・骨盤の安定性改善
腰椎に過度な負担がかからないよう、体幹のインナーマッスルを整えます。
STEP3 姿勢・歩行フォームの調整
腰を反らしすぎない姿勢の練習と、症状が出にくい歩き方を指導します。
STEP4 日常生活指導・自宅運動
休み方・杖やカートの使い方・自宅でできる運動・症状に合わせた筋力トレーニングを提案します。
運動療法にはエビデンスがあり、ぜひ実施いただきたい治療です。
腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法の研究では、屈曲方向の運動・ストレッチ・筋力トレーニング・有酸素運動(特に自転車運動)などが効果的な介入に含まれやすいことが報告されています。また、徒手療法・運動・歩行練習を組み合わせた理学療法プログラムが短期的な改善に優れていたとするランダム化比較試験もあります。
ブロック注射
足の痛みやしびれが強く、薬やリハビリだけでは日常生活がつらい場合、ブロック注射を検討することがあります。痛みの原因になっている神経の近くに薬を届け、炎症や痛みを抑える治療です。
- 強い足の痛みを和らげる
- 痛みで眠れない状態を改善する
- リハビリに取り組みやすくする
- 痛みの悪循環を断ち切る
ブロック注射の限界と判断基準
効果の出方や持続期間には個人差があります。硬膜外注射に関する研究では、有効性について報告がある一方で、研究やガイドラインによって評価が分かれる部分もあります。当院では、画像所見・症状の強さ・生活への支障・薬の効果を踏まえて必要性を判断します。
手術を考えるべき症状
保存療法で症状が落ち着く方も多いですが、以下のような症状がある場合は、手術を含めて早めに専門的な判断が必要です。
このような症状は放置しないでください
・尿が出にくい/尿漏れが出てきた
・便が出にくい/便意が分かりにくい
・会陰部(股の間)のしびれがある
・足に力が入りにくい
・つま先が上がらず、よくつまずく
・スリッパが脱げやすい
・数週間〜数か月で歩ける距離が明らかに短くなっている
・保存療法を続けても日常生活が大きく制限されている
特に、排尿・排便障害や進行する麻痺は、放置してよい症状ではありません。当院で手術が必要と判断した場合は、脊椎手術を行っている連携医療機関へ紹介します。
自宅で気をつけたいこと

「姿勢をよくしよう」が逆効果になることも
胸を張りすぎると、かえって腰が反って症状が強くなることがあります。腰部脊柱管狭窄症では、一般的な「良い姿勢」が必ずしも楽な姿勢とは限りません。
よくある質問
Q 腰部脊柱管狭窄症は自然に治りますか?
症状が軽くなることはありますが、加齢に伴う骨や靭帯の変化そのものが完全に元に戻るわけではありません。大切なのは、症状の程度を見ながら、薬・リハビリ・生活動作の工夫で日常生活を保つことです。
Q 歩いた方がいいですか?休んだ方がいいですか
痛みやしびれを我慢して歩き続ける必要はありません。症状が出たら休み、また歩ける範囲で再開するのが基本です。自転車やエアロバイクの方が症状が出にくい方もいます。
Q 整体やマッサージで治りますか?
筋肉のこわばりが一時的に楽になることはありますが、神経の圧迫そのものを評価しないまま強い施術を受けるのは注意が必要です。足のしびれ・筋力低下・歩行障害がある場合は、まず整形外科で原因を確認することをおすすめします。
Q MRIは必ず必要ですか?
すべての方に最初から必要なわけではありません。ただし、足のしびれが強い・歩ける距離が短くなっている・筋力低下がある・手術やブロック注射を検討する場合には、MRIで神経の圧迫を確認することが重要です。
Q 手術しないと歩けなくなりますか?
すぐに手術が必要な方ばかりではありません。保存療法で症状をコントロールできる方もいます。ただし、麻痺が進む・排尿排便障害がある・歩行障害が強く生活に大きな支障がある場合は、手術を検討する必要があります。
刈谷市・愛知県で、足のしびれや歩きにくさにお悩みの方へ
このような症状がある方は、無理に我慢せずご相談ください。
診察・画像検査・薬物療法・リハビリテーション・注射治療・専門病院との連携まで、 患者さんの状態に合わせて治療方針を考えていきます。
参考文献・診療ガイドライン
- 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会監修。
- Exercise treatments for lumbar spinal stenosis: A systematic review. PMID: 37715644
- A comparison between two physical therapy treatment programs for patients with lumbar spinal stenosis. PMID: 17047542
- Efficacy of epidural injections in the treatment of lumbar central spinal stenosis. PMID: 25789241